悟史立ちの家で朝食を食べたあの日から・・・いや、多分もっと前。
悟史が帰ってきてから、俺の心の中にはいつもモヤモヤがあった。
部活のみんなは悟史がまた居なくならないようにそばに居るし(勿論俺もだけど)、
なんだかんだで悟史を最優先してる。
当たり前だが、部活は自分が勝つことが一番だけど。
でも、俺の居場所、俺の場所・・・全部悟史に持って行かれた気がする。
いや、もしかしたら俺の場所は全部悟史の物だったのかもしれない。
悟史に似ている、と言われていたせいもあるかもしれない。
俺がほとんど悟史のことを知らないからかもしれない。

・・・けど、モヤモヤする。


今日の日直は俺と岡村君。
俺は適当に理由をでっちあげて、昼休み一人で知恵先生のカレー菜園に水をやっていた。
先に食べてていって言ったから、多分みんなもう食べているだろう。
やっぱり俺を待っててくれないかな、とかかなり女々しいことを考える。
小さな、淡い俺の期待。
けど俺なんか忘れてるんじゃないかという不安。


都会にいた時は、急に成績が上がった俺をひがむやつらはたくさんいた。
いじめもあった。
死ねとも言われた。
殴られた、蹴られた。
でもあのころの俺は学校のやつらはバカだって思ってたからほとんど取り合わなかった。
今思えばかなりの忍耐力だ。
今の俺には到底無理。
けれど、何より耐えられなかったのは一人で居ることで。

「俺は、また・・・」

暗い気持ちの中、俺は廊下を歩く。
けれど教室にの前に着いて、中からの明るい声を聞くと急に目が覚めた気がした。
くよくよしてたって仕方がないだろ前原圭一!
居場所がどうした。そんなの作ればいいだろ!
それにあいつらはそんなこと絶対にするようなやつらじゃない!
頬を両手で軽く叩いて気合いを入れ、教室のドアを開ける。

「ほら沙都子、ちゃんと食べないと」
「うー・・・でも、カボチャ・・・」

頭を、鈍器で殴られたような気がした。
なんとなく予想はしていた。
覚悟はしていた。気合いも入れた。
でも、でも・・・他のやつの時は、来るまで待ってただろ?
あぁ、でも俺が食べてていいって言ったんじゃないか。
しょうがない。しょうがない・・・。

『死ね』
『学校来んな』
『お前なんて誰も好きじゃねぇよ』
『ウザイ』
『消えろ』

頭の中で色々な声がガンガン鳴り響き、目の前が暗くなる。

「あ、圭一くん!ごめんね、ごめんね。遅かったから・・・・・圭一くん?」

俺に気付いて慌てて謝るレナの横を通り過ぎて自分の席に向かうと、鞄に荷物を詰める。
静かな空気の中、俺はまたレナの横を通り過ぎた。

「・・・ごめん。今日気分悪いから、帰るな」

教室を出ると中から俺を呼ぶ声が聞こえたけど、振り返らずにそのまま帰った。








暗いの好きです。続きます←